『戦場0地点』は、2023年、ウクライナ軍第3強襲旅団の小隊に同行したチェルノフ監督が、ロシア軍に占領されたアンドリーウカ村の奪還作戦を記録したドキュメンタリー。
監督は、ジャーナリストとしてではなく、兵士たちと行動を共にしながら戦場へ身を置く。
映像の多くは、兵士たちのヘルメットカメラやドローンによって撮影されており、観客は彼らとともに、アンドリーウカ村までのわずか2000メートルを進むことになる。
しかし、その距離は決して短くない。身を潜めながら前進し、一歩ごとに死と隣り合わせとなる極限の道のりである。
冗談を交わし、煙草を吸い、家族や未来について語る若い兵士たち。
そして、その直後に訪れる死。
チェルノフ監督は、彼らを、銃を手にする以前、それぞれの日常を生きていたひとりの人間として見つめ続ける。
激しい銃撃戦、ドローンによる襲撃、絶え間なく降り注ぐ砲弾、そして荒廃した大地に横たわる戦死体――。
本作は、ニュース映像や数字だけでは決して伝わらない戦場の現実を突きつける。
侵攻開始から4年以上が経った今も、ウクライナとロシアの戦争は終わりを見せない。
近年ではドローンが戦況を大きく左右する存在となり、ウクライナ軍は長距離無人機による攻撃でロシア本土の軍事施設やエネルギーインフラを狙うなど、戦争の様相は大きく変化している。
本作は、そうした現代戦の特徴ともいえるドローン戦と、塹壕戦が共存する21世紀の戦場を記録したドキュメンタリーである。
実際の目の前に広がる戦闘映像は、かつてない臨場感に満ちている。
日本でも安全保障政策や防衛力強化、憲法改正をめぐる議論が活発化し、“戦争”を遠い国の出来事ではなく、現実の問題として捉える必要性が高まっている。
戦争とは何か。そこでは何を失い、何のために戦うのか。
その答えの一端が、この映画には刻まれている。
監督・脚本・撮影
ミスティスラフ・チェルノフ